漢方薬でのED治療

次に、東洋医学ではどのようなEDの治療法があるのかご紹介しましょう。

鍼灸や湯液(漢方薬、煎じ薬)などの東洋医学的な治療法では、私たちの体に本来備わっている自然治癒力を高めホメオスタシスを最大限に発揮させることに主眼をおいています。

特にEDの鍼治療には全身の血流を改善(温保怍用)し自律神経系に働きかけて性ホルモンのバランスを調整する効果があると考えられます。これには当然個人差がありますが、私の治療を受けたすべての患者さんにその効果があらわれています。

EDをはじめ疾病の治療はもちろん、まだ病気にはなっていないが放っておいたら病気の原因となりそうな症状を前もって改善し、病気を未然に防ぐ予防医学としての効用が期待できるのも鍼灸治療の優れた点のひとつです。この予防的な医療である治療法を東洋医学では「未病治」といいます。

鍼灸治療は病気の治療はもちろん、健康の増進を目的とした医療にも貢献できる「体が喜ぶ医学」です。「健康で快適な生活を送ることができる心と体を自分のものにする」ことこそ東洋医学の真髄であると考えます。

一方、漢方薬は「生薬」ともいわれ、自然の草根木皮である植物をおもに動物や鉱物などもその原料とされます。そして、患者さん個人の症状に合わせて「煎じ薬」または「エキス顆粒」が選択されます。

ここで、漢方薬を処方する際に決定される「証」についてお話しましょう。

東洋医学では患者さんが訴える症状(愁訴)をもとにお腹や脈の状態を診て、これらの所見を総合し「証」を診断して治療方針を決めます。また「証」はそれぞれの漢方薬が適応する病態を示し、投薬する漢方薬名であらわされます。

それぞれの病気には個人差があり、漢方の処方ではこの個人差を考慮して治療がおこなわれますので、同じ病気でもまったく治療法が異なることもしばしばです。このあたりが「証」で治療を決定する東洋医学の診断法の大きな特徴ともいえます。

では、漢方薬によるEDの治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。「証」を診断したあとで処方される漢方薬を比較的使用頻度の高い順に並べると以下のとおりです。

八味地黄丸  桂枝加竜骨牡蛎湯  紫胡加竜骨牡蛎湯  補中益気湯  六味地黄丸  牛車腎気丸

では、これらの漢方薬について少し説明しましょう。

まず、八味地黄丸には地黄という植物を中心に合計八種類の生薬が混合されています。桂枝加竜骨牡蛎湯と紫胡加竜骨牡蛎湯の名称に使われている「加」という文字は「足す」の意味で、「匙加減」という言葉はここからきています。また桂枝加竜骨牡蛎湯と紫胡加竜骨牡蛎湯の「竜骨」は本来は恐竜の化石が用いられていましたが現在ではマンモスの骨で代用しています。さらに「牡蛎」とは、男性ホルモンの生成に欠かせない亜鉛を多く含み、海のミルクとも呼ばれるカキの貝殻を乾燥させたものです。

牛車腎気丸はED発症のおもな要因となっている「腎虚証」に効果のある漢方薬そのものの名称といえるでしょう(「腎虚証」についてはのちほど詳しく説明します)。

なお、エィズや末期癌などの患者さんに処方される漢方薬には、十全大補湯を筆頭に、免疫系に锄きかけて自然治癒力を高めるものがたくさんあります。疾病の原因そのものに有効な特効薬とされる一部の薬を除いては、体の免疫抵抗力を強化することで病気を治そ 、つとする治療法を最優先するのが得策といえます。

慢性疾患としてのEDをはじめ男性不妊症のケースでも、「じっくり、しっかり、急がば回れ」の処方スタィルで、体のそれぞれの機能を正常な状態に戻していくことを基本とした治療を心がけているのです。

東洋医学と鉞灸治療のより詳しいお話はまた别の章でするとして、次の章では、EDの鍼灸治療が実際にどのようにおこなわれているのか詳しくご説明したいと思います。